犬や猫の寿命は、飼い主の疾病予防・治療要望の高揚と獣医療の向上により明らかに延長しています。それに伴って、病気の種類も時代とともに変遷し、寄生虫・伝染性疾患や外傷から腫瘍・糖尿病等のいわゆる成人病が小動物臨床の主役に変わりつつある現状です。しかし、獣医腫瘍治療の歴史は比較的浅く、米国でも獣医がん学会( Veterinary CancerSociety)が発足し近代的な腫瘍治療が始まったのはこの十数年でしかありません。わが国でも、腫瘍治療ニーズの向上に伴い、研究会や学会の必要性がささやかれていましたが、夜明け前の混沌とした状態が続いていました。しかし、1994年11月に有志26名が集い研究会発足の発起人会が開催され、待望の日本獣医がん研究会が誕生するにいたりました。
本会は、腫瘍の診断・治療技術の向上のみならず、本邦における腫瘍臨床例の集積と分析、最新情報の収集、新しい治療法の臨床治験、獣医師の卒後教育、医学・薬学等の他分野との提携など、日本の獣医臨床腫瘍学の発展のために寄与することを目的としています。そして、この研究会だけは単なるよそゆきの症例発表会や講演会で終わらせず、学閥や人のしがらみ・歳の功をぬきで純粋に症例のための討論が活発にできるフランクな研究会にしていこうという発起人の総意で設立されました。また研究会で腫瘍の診断・治療効果判定基準等を統一して全国的な腫瘍症例の集積を行ない、日本独自の臨床の現場で役立つデーターをみんなでつくる実質的なワーキンググループを目指しました。
1994年11月20日、大阪にて発起人会が開催され、研究会の目的や活動内容等の合意がなされ、『日本獣医がん研究会』の名称で発足することが決定されました。さらに、翌1995年2月11・12日には麻布大学獣医学部においてニューヨークのAnimal Medical Center Dr.Neal MauldinとGlenna Mauldinを招き、乳腺腫瘍・肥満細腫・リンパ腫をどう治すかをテーマに第1回研究会講演会が開催されました。当日は事務局の予想をはるかに越える284名の参加者が得られました.参加者には、各大学の研修医や学生など78名が含まれ、この分野にふさわしくフレッシュなムードの中に活発な討論が展開されました.それ以来、本年で15年目を迎えますが、過去29回の研究会には元コロラド州立大学教授G.K.Ogilvie氏やタフツ大学助教授A.S.Moore氏など小動物臨床腫瘍学の世界的権威を招聘し有意義なディスカッションが展開されました。
日本獣医がん研究会は、発展的に解消し、会員・繰越金等をすべて継承し、その基本理念である我が国における獣医腫瘍診断・治療の発展と推進に寄与するべく、2009(平成21)年4月1日に発足いたしました。前研究会と同様に、本学会の存在意義は、単なる学者のための学術団体ではなく、学閥や年功等のしがらみを排除し純粋に動物と飼い主のために本邦の獣医腫瘍診療レベルを向上させることにあります。
<執行部構成>
<会員構成>
正会員: | 2,976名 |
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準会員: | 30名 |
名誉会員: | 2名 |
賛助会員: | 14社 |
合 計: | 3,022名 |
(2023年8月31日現在)