あゆみ

1980年、悪性腫瘍診断のバイブルともいえる動物のTNM分類(Classification of Tumors in Domestic Animals)が、L. N. Owenの手により世界保健機構より公布されました。

本邦でも、飼い主の治療ニーズの向上と世界的なこれらの進歩に歩調を合わせるように、1994年11月、信田卓男・南 毅生氏が中心となって26名の発起人のもと日本獣医がん研究会が設立され、翌1995年、第1回研究会が麻布大学で開催されました。当初会員数185名で始まった研究会は、15年後の今日1466名を数える学会に育ちました。急激な本会の発展は、獣医がん治療の社会的ニーズもさることながら、開設以来、多大な尽力をいただいた各期の執行部役員(下記)・事務局を担当された麻布大学学会腫瘍科(一期・二期)・南動物病院(三期)各位のご努力の結果であると思います。

本会が、現在までの本邦における小動物がん治療の進歩に多大な貢献をしたことは言うまでもありません。さらに、本会の設立主旨である本邦の臨床腫瘍学の発展、臨床獣医師の腫瘍診療技術の向上に将来的にも一翼を担っていくものと信じています。

また、第二期執行部(信田卓男第二期会長)によって確立された獣医腫瘍科認定医制度によって、過酷な筆記試験および面接試験にパスしたI種認定医およびII種認定医が、現在臨床現場で活躍しています。「名実ともに我国の獣医腫瘍臨床の先駆者たれ」という初代認定委員長の志を引き継ぎ、地域の臨床家と力を合わせ、より高度ながん治療を動物と飼い主に提供すべく日夜診療に当たっています。動物のがん治療に誠心誠意を尽くす彼らのような獣医師集団がいる限り、本邦の獣医臨床腫瘍学は今後益々の発展を遂げることでしょう。また将来に向けて、世界の獣医臨床に照準をあわせた本邦における腫瘍専門医の道を模索しています。

日本獣医がん研究会のあゆみ

(敬称略)

1994年 11月 第1回 総会 第一期執行部(会長:山根義久 副会長:信田卓男/南 毅生)
1995年 2月 第1回 日本獣医がん研究会 【乳腺腫瘍・肥満細胞腫・リンパ腫をどう治すか】
  ▼Dr. Neal Mauldin/Glenna Mauldin (アニマルメディカルセンター) 特別講演
10月 第2回 日本獣医がん研究会 【腫瘍の合理的な診断手順とアプローチ】
1996年 1月 第3回 日本獣医がん研究会 【化学療法の実際/腹腔内腫瘤の診断と治療】
  ▼Dr. Gregory K . Ogilvie (コロラド州立大学) 特別講演
7月 第4回 日本獣医がん研究会 【口腔内腫瘍に対する診断と治療】
1997年 1月 第5回 日本獣医がん研究会 【乳腺腫瘍をどう治すか】 
  ■第二期執行部 (会長:信田卓男 副会長:石田卓夫/南 毅生)
7月 第6回 日本獣医がん研究会 【消化管腫瘍の診断手順と診療へのアプローチ】
1998年 2月 第7回 日本獣医がん研究会 【肥満細胞腫】
  ▼Dr. Antony S . Moore (タフツ大学) 特別講演
7月 第8回 日本獣医がん研究会 【泌尿器系腫瘍】
  ■日本独自の腫瘍統計スタート  
1999年 1月 第9回 日本獣医がん研究会 【腫瘍の外科手術】
  ■獣医腫瘍科認定医制度スタート
7月 第10回 日本獣医がん研究会 【骨腫瘍】
2000年 1月 第11回 日本獣医がん研究会 【腫瘍に対する最新外科治療】
  ▼Dr. Dennis Olsen (カンザス州立大学) 特別講演
  ■獣医腫瘍科認定医II種講習会スタート
7月 第12回 日本獣医がん研究会 【呼吸器系腫瘍】
2001年 1月 第13回 日本獣医がん研究会 【獣医放射線治療の実際】 
  ▼Dr. Donald E . Thrall (ノースカロライナ州立大学) 特別講演
  ■第三期執行部 (会長:南 毅生 副会長:辻本 元/廉澤 剛)
  ■第1回 獣医腫瘍科認定医II種試験
7月 第14回 日本獣医がん研究会 【最近の抗がん治療】
  ▼Dr. Philip Bergman (アニマルメディカルセンター) 特別講演
  ■第1期獣医腫瘍科II種認定医誕生
2002年 1月 第15回 日本獣医がん研究会 【乳腺腫瘍】
  ▼Dr. A . K. Patnaik (アニマルメディカルセンター) 特別講演
  ▼伊関 洋先生 (東京女子医科大学) 特別講演
  ■第1回 獣医腫瘍科認定医I種1次試験
7月 第16回 日本獣医がん研究会 【骨腫瘍・口腔腫瘍・肝臓腫瘍・乳腺腫瘍】
  ▼田伏克惇先生(国立大阪南病院)特別講演
  ■第1回 獣医腫瘍科認定医I種2次試験
2003年 1月 第17回 日本獣医がん研究会 【肥満細胞腫】
  ■第1期獣医腫瘍科I種認定医誕生
7月 第18回 日本獣医がん研究会 【腫瘍内科】
  ▼秋山伸一先生(鹿児島大学)特別講演
2004年 1月 第19回 日本獣医がん研究会 【進行性腫瘍について】
  ▼Dr. Philip J . Bergman (アニマルメディカルセンター) 特別講演
7月 第20回 日本獣医がん研究会 【ソーシャルワーカーの活動】
  ▼Susan Phillips Cohen (アニマルメディカルセンター) 特別講演
2005年 1月 第21回 日本獣医がん研究会 【リンパ腫を極める】
  ▼Dr. Antony S. Moore (獣医腫瘍学コンサルタントPty Ltd) 特別講演
  ■第四期執行部  (会長:藤田道郎 副会長:川村裕子/田邊茂之)
7月 第22回 日本獣医がん研究会【腹腔内腫瘍に挑む】
2006年 1月 第23回 日本獣医がん研究会【肥満細胞腫2006】
  □動物病院スタッフセミナー がん治療チームの主役になる!
【Part1】 川村裕子(麻布大学附属動物病院腫瘍科)
  □一般セミナー あなたの動物をあなたがまもる!! 岡嶋俊男(栃木街道動物病院)
7月 第24回 日本獣医がん研究会【胸腔内腫瘍に挑む】
2007年 1月 第25回 日本獣医がん研究会【泌尿器腫瘍2007】
  ▼Dr. Chick W. Weisse(ペンシルベニア大学) 特別講演
  □動物病院スタッフセミナー がん治療チームの主役になる!
【Part2】 川村裕子(麻布大学附属動物病院腫瘍科)
  □一般セミナー あなたの動物をあなたがまもる!! 堀 英也(辻堂犬猫病院)
7月 第26回 日本獣医がん研究会【腺組織の腫瘍に挑む】
  ■臨時総会にて学会移行案が承認
2008年 1月 第27回 日本獣医がん研究会【口腔腫瘍2008】
  ■幹事会にて信田卓男が第一期学会会長として推薦承認、総会にて承認。
7月 第28回 日本獣医がん研究会【リンパ腫最前線!】
  ■臨時総会にて学会会則の変更が承認。
  ■第一期学会副会長指名があり石田卓夫、南毅生、藤田道郎、3名の承認。
2009年 1月 第29回 日本獣医がん研究会【消化管腫瘍2009】
  ■学会移行のため、3月末日で第四期執行部(会長:藤田道郎 副会長:川村裕子/田邊茂之)任期満了
4月 日本獣医がん学会発足

株式会社ファームプレス 小動物腫瘍臨床 Joncol
2005年9月1日 No.1 Vol.1 pp74-75
川村裕子「日本獣医がん研究会 10年の歩み」より引用し、一部修正・加筆

TOP
facebook